バルセロナのテロから一週間、日本では報道されなかったスペインのニュースを読み漁って思ったこと

バルセロナのテロから一週間、日本では報道されなかったスペインのニュースを読み漁って思ったこと

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8月17日バルセロナ起こったテロから一週間。
事件に関係していた犯人は全員拘束され、バルセロナの街もすっかり事件前と同じ光景に戻りつつあります。

事件の詳細や犯人像が徐々に明らかになるにつれて
当初はかなり大規模なテロが計画されていたことや、犯人たちのイスラム国とのつながりが日本でも連日報道されているようです。

日本のマスメディアで報道されるように、この大惨事を引き起こした犯人たちの罪は深く”凶悪犯”であることは間違いのない事実です。

ただ同時に、スペインのマスメディアを通じて伝えられた”犯人像”ー犯人の家族や同僚のインタビューを読むと
(賛否両論はもちろんあるかと思います。)
”ホームグロウンのISのテロリスト”というよりは”たまたま運悪く短期間に過激思想に洗脳されてしまった少年達”のように見え、ある意味彼らもイスラム国のテロの被害者だったのではないかと思わずにいられません。

■ カタルーニャとバルセロナにおける移民、イスラム教徒の現状

日本とは”移民”の立場や状況が全く異なるので、少し説明を加えておきます。
バルセロナのあるカタルーニャ州においては、全体人口に対して移民が14%、バルセロナ市では13%を占めています。(バルセロナの郊外のジローナ市では20%にのぼり人口の5人に一人が移民ということになります。)スペイン全体の平均が10.9%となるので、やや移民が多い地区です。
また移民の中でもモロッコからの移民の割合が突出しており全体の20%を占めています。(次に多いのがルーマニアからの移民で9%です。)

カタルーニャはヨーロッパの中でも最も低いとされる近年低い出生率(1.1)を記録しており、一方でカタルーニャ地方のイスラム教徒の出生率は8.1近いそうです。バルセロナ近郊に住む30歳以下の人口の20%がイスラム教徒だといわれています。(バルセロナの周辺の都市、フィゲラス、ビック、ルビなどではこれが30%までに昇るそうです。)2020年にはカタルーニャ人口の5人に一人がイスラム教徒となり宗教的マジョリティになることが予想されています。

実際、街ではイスラム教徒の服装(チュニック、ブブカ)などを身につけている人たちをかなりみかけますし、モスクも街の中に教会と同様に普通に建っています。(バルセロナの中心、カタルーニャ広場のすぐ近くにもモスクがあります)
日常生活においては特に宗教的、文化的な対立が目に見えて起こっているわけではなく移民2世の子供たちは他の子供たちと同様公立学校で授業を受け、スペイン語・カタラン語を話しますし、移民の人たちの多くは、スペインの労働階級の人たちと同様、工場や建設現場で働いたりサービス業に従事しており、移民だから経済的に経済的に困窮しているという状況は比較的少ないように思えます。

今回の事件で”移民”である立場の彼らが、社会的な不満を募らせ過激な思想に傾倒していったと思われる節もあるようですが、スペインのニュースの記事を読む限り彼らもほんの数カ月前までは普通に働き、地域社会にも適応して普通に暮らしていたようです。
スペインを代表する新聞”El pais”の関連記事、そして引用を紹介させていただきます。

■ Younes, el joven que cambió el fútbol por el terrorismo
(ユネス、サッカーをテロリズムと交換した若者)

ランブラス通りで多くの犠牲者を出したバンを運転していたテロの中心人物ユネスの様子が短期間で変わっていったことを証言するリポイの街の人たちの声が記事になったものです。

ユネスについては

“Si querías encontrar a Younes [Abouyaaqoub], o a su hermano [El Houssaine, muerto a tiros en Cambrils], solo tenías que pasarte por la pista de fútbol sala. Solo se quitaban la ropa de deporte para ir a currar o para ponerse la túnica, en el Ramadán y en sus celebraciones”,

もしユネスか彼の弟のホウサ(カンブリスで警官により射殺)をみつけたいなら、サッカー場に行きさえすればよかった。仕事にいくときとラマダンやその御祝いででチュニックを着ているとき以外は(サッカー用の)運動着を着ていたからね”

era muy habitual ver a Younes ayudando a personas mayores de la escalera a cargar bolsas de la compra, “con una educación exquisita”.

ユネスが階段年老いた人たちの買い物袋を持ってあげて助けているのを見るのは日常的なことだった、”突出して礼儀正しい”人物だった。

と述べています。

. “Ha sido rápido, inesperado. Desde la primavera que no actuaban como siempre, no venían a darle a la bola”

(彼が変わっていったのは)想像にもつかないことだったし、とても速かった。春ごろからいつもと様子が変わって、ボールを蹴りにも来なくなった

もう一つの記事、
■ ”¿Cómo puede ser, Younes…?”

同人物のAsistente social(移民がスペイン社会にうまく適応するためのサポートを行うソーシャルワーカー)であったラケルさんが犯人に向けて書いた手紙です。

Permitidme enseñaros cómo eran ellos, o al menos los niños que conocí yo. Mis pre-jóvenes del Lokal.
(中略)
El más pequeño tenía unos 8 años y venía siempre de la mano de su hermano. Un hermano educado, tímido, amable, buen estudiante, tranquilo, en la escuela nunca se metía en líos. Un niño que siempre me ofrecía bolsas de quicos o alguna golosina que se compraba con el poco dinero que tenía.

Había dos hermanos que siempre se peleaban. El mayor se ponía rojo cuando entraba aquella niña que le gustaba, aunque nunca le llegó a decir nada. Nunca fallaba al lokal cuando estaba ella.

(彼ら少なくとも私が知り合った少年たちがどのようであったか説明させてください。私の”教室”の”若者になる前の少年たち。

一番小さな子は8歳でした。いつも兄と手をつないでやってきました。兄はとても礼儀正しく、シャイで親切で勤勉な学生でした。物静かで学校でも決してトラブルを起こすことはありませんでした。いつも、持っているわずかなお金で買ったおかしやトウモロコシのスナックを私にくれようとする男の子でした。

いつもケンカをする兄弟がいて、兄のほうは好きな女の子がやってくると顔を赤らめました。彼女に話しかけることはありませんでしたが、彼女がいるときは必ず教室にやってきました。)

犯人グループの少年たち(ほとんどが10代後半から20代前半の少年たちでした)わずか2カ月で今回の事件のリーダーとなる人物に洗脳されたとも報じられています。

宗教もたまたま”イスラム教”であっただけで、スペイン、ヨーロッパに限らずどの場所のどの宗教でもきっかけになり得たのではないだろうか、と思わずにいられませんでした。

現在バルセロナは、95%事件前の状態に戻りつつあり、2度と同じ悲劇が繰り返されぬよう大通りなどには車両が入れないように障害物が設置され、警備にあたる警官の数も増やされることが計画されています。(既に以前より警備は厳重に行われています。)
ですので、これからスペイン、バルセロナに御旅行を予定される方は特に心配せず、以前よりも安全に滞在を楽しんでいただけることかと思います。

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